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【2018/6/26更新】令和最初のxR Tech Tokyo #16 の全講演をまとめてみました

XR系のイベント「xR Tech Tokyo #16」に参加しました。ブロガー枠での参加というのもあり、講演内容をまとめました。

他にまとめられてる方のリンクです。

xR Tech Tokyo #16メモ - トマシープが学ぶ

1. xR Tech Tokyoとは?

xR Tech Tokyoは、2016年からおおよそ隔月で開催している VR, AR, MR 関連の開発者向け勉強会イベントです。

引用:https://vrtokyo.connpass.com/event/121561/

XRに関する勉強会は多数ありますが、私の知る限りこのイベントでは毎回100人近くの参加者がいる規模の大きなものです。xR Tech Tokyo登録メンバーは前回よりも増えていました。

2019/2/17(14回目) :2042人

2019/4/20(15回目):2173人

2019/6/23(16回目):2324人

xR Tech Tokyo - connpass

会場は前回と異なり(株式会社DMM.com)http://dmm.com/です。南北線六本木一丁目駅から直結だったので楽でした。

2. 講演(30min session)

2.1. 仮想世界の“居場所”を創るために / ambrを支える技術とUI/UX

発表者:ambr, inc. VPoE 夛名賀 浩介 氏 @tanacooo

ambrとはVRを使ったSNSです。

screenshot of ambr

2019/6/23時点では事前登録者以外は使うことができません。また、1日30分に制限しているそうです。 今年の夏くらいからフルオープンを予定しているそうです。

2.1.1 仮想世界の“居場所”を創るために

最近の傾向として、グローバルではVR SNSが広がり、国内ではVTuberが進んでいます。

SNSはFacebook、Twitterなどの国外企業によって占められていることから、VRのSNSは国内発を作りたかったのが動機です。ambrは6名で開発を進めており、計1億円の資金調達を実施し採用強化中とのことです。

ambrでは、毎日続けたくなるような仕組み作りのため、SNS連携強化、あえてログイン時間を制限、VTuberなどのイベントとのコラボレーションを工夫しているそうです。

将来的な展望は下記の通りです。収益化までできると、デジタルの世界が新しく立ち上がりそうですね。

  • 1人1アバターで仮想世界を旅することができる

  • 仮想世界で収益化できる仕組みを入れる

2.1.2 ambrを支える技術とUI/UX

バックエンドから端末側パフォーマンスの工夫まで紹介されていました。ここではパフォーマンスの工夫について書きます。

** 5000以下の軽量ポリゴン

** アバター姿勢制御に処理を食うので、自分から見て遠くにいるアバターの動きは更新頻度を下げている。なので、遠くのアバターをみるとかくついているが、そもそも遠くだと見ないことを利用

** ワールド全体をメッシュ結合して軽量化

** パーティクル非依存のエフェクトを採用

2.2 VRの中のリアル ソード・オブ・ガルガンチュア開発で見えた本当のVRの世界

発表者:株式会社よむネコ 新 清士氏@kiyoshi_shin

ソード・オブ・ガルガンチュアとはVR向けのマルチプレイ剣戟アクションゲームです。 新さんのご説明では「ガルガンチュアはVRらしさを追い求め、剣戟+4人マルチの実現を果たした世界初のゲーム(Oculus公式見解あり)」とのことです。

Oculus Rift S、Oculus Quest、SteamVRに対応しています。

HOME_JP | SWORDS of GARGANTUA

2.2.1 戦略や工夫

戦略:

  • 普及を優先し、価格を1990円に抑えた

  • MR撮影機能「LIV」を使用し、発売前後でプレイ動画をYou Tubeなどで広めて、宣伝効果を高めた

LIVのHPはこちらです。VRの画面とプレイ中のプレーヤーを合成する仕組みを提供しています。細かい説明よりはこちらの動画を見るのがわかりやすいです。

youtu.be

You Tubeには体験動画が多数ありました。どれも宣伝効果として十分と思いました。いくつか貼っておきます。

VRアーティストのせきぐちあいみさん
youtu.be

VTuberの兎鞠まりさん
youtu.be

ゲームタレントEdoさん (講演中に紹介されてました)
youtu.be

工夫:

  • 無双型(圧倒的な力で敵をなぎ倒すゲーム)にせず、うまく身体を動かすことでゲームが進むようにして、プレイ意欲向上を実現

  • ワープ移動は没入感を減らすという意見がredditにあり、ゆっくり移動、頭を振ることで瞬間回避などの工夫で没入感を保った

reddit :海外版のソーシャル投稿サイトです。日本では「2ちゃんねる(2017/10より5ちゃんねるに名称変更)」がよく似ていると言われています。

  • VR酔い抑制のため、トンネル効果や集中線効果を入れた

トンネル効果:移動中、外周をわざと暗くして目に見える情報量を減らすことで酔いを減らす効果のことです。

集中線効果:進行方向に集中線を入れると酔いが減らせる効果のこと。なぜこうなるかは理由不明とのことです。


2019/6/26 追記

このようなツイートをいただきましたので、参考のために掲載します。


2.2.2 開発上の苦労と対応

  • PCVRから初めてOculus Questに移植したら2FPSしか出なかった

→ 多数の工夫を入れて最後に目標達成

補足:いくつかの工夫はUnreal Fest 2018で講演済みの下記をご覧ください。

www.slideshare.net

  • 既存のゲームデザイン手法がほぼ使えない
    →テスト、社内での議論を多数繰り返して最適解を探し続けた

2.3 DMMでのバーチャルの取り組み大公開スペシャル

発表者:@pg_nokkii氏, @yanoshi

2018/12にVR研究室を設立。色々と取り組みが進んでいるそうですが、少し事情があってまだ公開できないものが多いそうです。 そこで、今回はDMMの動画配信基盤についての話が中心でした。


2019/6/26 講演スライドを追記しました。

speakerdeck.com


動画配信サービスの開発上の課題

  • HQ画質でのマルチデバイス対応

HQ画質:4K以上の解像度、60fps

  • ソフトウェアによるデコード(描画向け変換)は負荷が厳しく、デバイスによってデコーダの仕様が異なっている。

Decoder specification difference between devices

→ 解決策として、全デバイス別にエンコードを実施し、数十ファイルを作って配信できるようにした。

なお、冒頭ではDMMスクラッチ公式キャラクター『銀(しろがね)めくる』のも紹介されていました。参考のため、URLを貼っておきます。

www.youtube.com

3. 講演(15min short talk)

3.1 Oculus Quest完全に理解した

発表者:@nkjzm

ご自身で作られたゲームを元に、Unityを使った開発ノウハウを紹介されていました。

speakerdeck.com

カメラの調子が悪くて写真が撮れなかったので、撮影されてた方のツイートを引用します。

当日のスライドの他に、Qiitaでも同様のノウハウが紹介されているのでご参考ください。

Oculus QuestでuGUIを操作する - Qiita

Oculus Questで空間を自由に移動するデバッグ用スクリプト - Qiita

3.2 楽しい点群

発表者:@koukiwf

最近@koukiwfさんが取り組まれている、実空間に3D点群データをマッピングする仕組みの紹介です。

点群の作り方として、いくつかの手段があります。

How to make point cloud

Cloud CompareやMeshLabなどのツールで加工が可能ですが、@koukiwfさんはUnityで取り込んで処理しているそうです。

関連記事

unityでポイントクラウド用に点を描画してみた。 - Qiita

3.3 ARクラウドを用いたまちづくりアプリの開発を通して得た学び

発表者:@ar_ojisan

MESONの方の講演です。
MESON社ではデバイス、技術インフラ、UXの3つが揃ったときにARが広まるとし、R&Dや検証を進めているそうです。

今回はAR City in Kobeの内容紹介と工夫点を解説されていました。ここでは開発上の工夫について整理しました。

  • AR Coreのガイドラインを参考にする

ガイドライン:Introduction - Augmented Reality Design Guidelines

建物の名称の出し方、領域外に出てしまった時のナビゲートなど、ARCoreのガイドラインには参考になることが多いそうです。

たとえば、今回のAR Cityでは、領域外に出た時はちょうちょが正しい方向を誘導するUIを入れています。

Navigation method with butterfly

  • チーム内での共有をスムーズにするため、既知のAR研究を全員で共有した

これにより、図や文字だけの共有では齟齬が出やすいが、抑制できたとのことです。既存の研究はノウハウが詰まっているので参考にするのはよいですね。

  • ユーザのリテラシに差による進行のもたつきを防ぐため、運営側で進行を制御

Control AR city process by organizers

  • 複数人動作が前提の仕組みであり、開発時のテストが難しい(1人のエンジニアで何台ものiPadを持てるわけではない)

2台では出なかったが、5台で動かしたらエラーが出るなどもありえるためです。

3.4 東大VRサークルUT-virtualのすべて

発表者:@wappaboy

UT-virtualとは、全国最大規模のインカレサークルです。2017年に発足し、130名ほどの部員がいるそうです。

大学の学祭での出展、定例会開催を進めるだけでなく、メンターを中心とした中規模の集まりでの活動を進めることで、活動を促進しているそうです。

また、私は時間の都合上体験できませんでしたが、同時に出展もされていました。

4. おわりに

毎回発表分野の範囲が広いため、技術、ビジネス面でどういうことが進んでいるのかを学ぶことができて、今回もとても勉強になりました。

最後に、30min講演された会社ではいずれも各職種募集中とのことでしたので、興味のある方はお声かけされるとよいかと思います。