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日本の技適に対応していない海外製品を特例制度で使用するための手続きをまとめました

XRに関係するデバイスは色々ありますが、残念ながら一部の機器は技適に対応していません。技適未取得機器をそのまま使うと、電波法に抵触する懸念があります。

ただし技適未取得機器であっても、適切な手続きをとると法律上の問題を気にせずに使うことができます。

今回は、このような手続きである、「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」の概要と、実際に技適未取得機器を使って手続きをした流れを説明します。

1. 技適未取得機器を用いた実験等の特例制度とは?

以前は技適マークがない機器は一部の例外(例:海外から来た観光客が所持するスマートフォン)を除き、使用することができませんでした。使用する場合は電波暗室で実施する必要がありました。

しかし、以下の通り、現在は特定申請があります。

Wi-FiやBluetoothなどの無線機器を使うには、原則、技適マークが必要です。 ただし、短期間の実験等のみを目的とする場合は、手続(届出)を行うことで使用できます。

引用元:総務省 電波利用ホームページ|その他|技適未取得機器を用いた実験等の特例制度

これは、判定チャートで対象となった機器について、使用前に届出を出すことで、自分の責任で使えるようになるというものです。

判定チャートの条件は大まかに3つあります。

(1) 海外の認証マークがついている

アメリカだと技適相当にFCCという認可マークがあります。例えば、これが付いていると確実です。

(2) 周波数の帯域が決められた範囲内である

使用できる周波数帯は以下の通りです。XR系のデバイスであればまず問題ないと思います。

Available frequency area for Technical Conformity Mark

引用元:技適未取得機器を用いた実験等の特例制度

(3) 180日以内の短期間の実験・試験・調査で使用するものである

同一の目的で180日を超えることはできないとされています。

マイナンバーカードがあれば申請から認可までは全てWeb上で完結します。私は数時間で全部終えることができました。

2.脳波センサー「NextMind」を対象として特例制度の手続きを試す手順

2.1 大まかな流れ

[1] 総務省の専用サイトにアクセスして、自分の個人情報を登録してアカウントを作る

[2] マイナンバーカードを使って本人認証を行う (総務省の総合通信局又は総合通信事務所窓口に直接行って手続きすることでも可)

マイナンバーカードを使わない場合、窓口の管轄区域はこちらに一覧があります。

[3] サイト上で機器情報を入力し、申請ボタンを押す

[4] 即認可され、登録したメールアドレスにメールが届く

実際に試した例はこのサイトにも詳しく書かれています。

internet.watch.impress.co.jp

今回はNextMindの登録作業を元に手順で詰まったところ、注意点などを紹介します。NextMind自体については別の記事で説明予定です。
なお、私はマイナンバーカードを持っていたので、マイナンバーカードを使う手順について説明します。

2.2 ユーザ登録

最初にメールアドレスの登録が必要です。このアドレスは今後2段階認証の番号が届くためにも使われます。

手続きが進むと、ブラウザのプラグインとしてマイナポータルAPをインストールする作業があります。すでに実施済みの場合は不要です。
対応ブラウザは、Chrome (Windows)、Safari (Mac)です。

補足

マイナポータルは、政府が運営するオンラインサービスです。子育てや介護をはじめとする行政手続がワンストップでできたり、行政機関からのお知らせを確認できたりします。

引用元:マイナポータルとは : マイナンバー(社会保障・税番号制度) - 内閣府

Q. マイナポータルAPとは何ですか。 A. マイナンバーカードを読み取るために必要なソフトウェアです。

引用元:マイナポータルAPとは何ですか。 | よくある質問|マイナポータル

2.3 マイナンバーカードを使った本人認証

今後はわかりませんが、現時点ではPCとICカードリーダが必要で、スマートフォン単体ではできないようです。

対応するICカードリーダの一覧はこのページで紹介されています。私はソニーのRC-S380という機種を持っていたのでこれを使いました。

また、マイナンバーカードは電子証明書を登録している必要があります。

参考:

faq.myna.go.jp

2.4 機器の発する電波、外国の技適相当マークの情報を調べる

NextMindはクリップのように挟む箇所があるのですが、そこにcontains FCC IDという記載があります。ここにはQOQ11と書かれていました。
これはQOQ11で登録されたモジュールを内蔵しているという意味です。

参考: 計装豆知識|米国の規制 FCCについて

今度は、QOQ11をFCC の検索サイトで調べます。

www.fcc.gov

このようにQOQと11を入力してSearchを選択します。

An example of FCC ID search form

検索結果画面の「View Form」という箇所を選択すると、QOQ11として登録されたモジュールの詳細が表示されます。

An example of FCC ID view form of QOQ11

今回は、この中に書かれている「Blue Gecko BGM11SxA/BGM11xN Bluetooth Smart Module」がモジュールの製品名です。

今度は、この名称+detasheetというキーワードでGoogle検索して、モジュールの詳細情報 (データシート) を探しました。

Based on EFR32BG1 SoC, the BGM11S also integrates a Bluetooth 4.2 compliant Bluetooth Low Energy and it can also run end-user applications on-board or alternatively used as a network co-processor over one of the host interfaces.

引用元:https://www.silabs.com/documents/public/data-sheets/bgm11s-datasheet.pdf

このように、Bluetooth4.2とあります。技適特例の申請で申告する電波の種類はこれを使います。

2.5 必要な情報を登録する

実験目的など、サイトの指示に従って入力していきます。
機器が発する電波は、NextMindの場合はBluetooth4.2なのでそこにチェックを入れました。

declare special Technical Conformity Markform for electric wave

あとは機器のシリアル番号、製造元、FCC IDを入力します。NextMindの場合は以下の通りです。

Serial info for NextMinde Dev Kit

設置場所を書く欄もあります。通常使う場所(自宅、会社の住所など)を入力します。

必要な事項を全て入力してから申請ボタンを押すと、ほぼすぐにメールが届きます。

これで申請完了です。

3. おわりに

FCC IDの特定に少し時間がかかりましたが、申請自体は思った以上に簡単でした。また、本来ならば総務省の総合通信局又は総合通信事務所窓口に直接に行く必要があったわけですが、マイナンバーカードを持っていたおかげで省略できてよかったです。 次回は、NextMindのセットアップや試した内容について書く予定です。