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XR技術者目線でみたブロックチェーンとXR動向について

前回の記事では、ブロックチェーンカンファレンス内容まとめと、基本的な用語について整理しました。

XR技術者目線でまとめた「ブロックチェーン・ビジネスサミット2018」の内容について - CrossRoad

そのとき、ブロックチェーンとXRの関連も調べていたのですが、思ったより長くなったので、記事を分けて紹介します。

1. ブロックチェーンとVR

1.1 VR空間の中で居住区を購入して所持できるプラットフォーム「MARK.SPACE」

概要 | MARK.SPACE

VRHMDがなくても、スマートフォン、タブレット、PCでも利用可能です。同社HPの中にある「ロードマップ」を見ると、2019年の12月にMARK SPACE用の開発者向け言語「MOSL」が使用可能になるようです。

MARK SPACEについては、日本語のWhitePaper(マーケティング向けに自社の特徴を整理した文書)が公開されています。

https://mark.space/files/wp/WP_jp.pdf

ロードマップ、開発言語、具体的な利用方法などが書かれているので興味ある方はご覧ください。

1.2 VR空間の中で土地を購入し、自由にプログラミングで加工できるプラットフォーム「Decentraland」

Decentraland

こちらもHMDを使わなくても利用できますし全体的にMARK.SPACEに似ていますが、自分でプログラミングすることで空間を作る点が大きく異なります。ソフトウェア技術者の方であれば、同社の下記のページ辺りを見るとどういうものかイメージがつくと思います。(私はやりたくなりました)

Coding scenes | Decentraland

2. ブロックチェーンとAR

2.1 地図上に表示された仮想通貨を集めるゲーム「AirCoin」

http://air-coin.co/

カメラ越しに重畳表示された仮想通貨を取得していくゲームです。ポケモンGoのような位置情報を使ったゲームで、自分で歩いていくことで仮想通貨をもらえるのがすごいですね。

遊び方について詳しく書いてあるサイトです 仮想通貨を探して貯めるARアプリ「Aircoins (エアコインズ) 」遊び方解説! | CRYPTO TIMES

せっかくなので試してみました。

AirCoinsアプリで六本木付近を調べた結果

たまたま行った六本木付近は1つもありませんが(左)、範囲を広域にしたら出てきました(右)。ただ、自宅付近はたくさん出てきたので、六本木付近はすでに誰かが取得済みなのかもしれません。またコインが復活するか、復活するとした場合の頻度は不明です。

2.2 ブロックチェーンとARを使った商用プラットフォーム「Scanetchain」

Scanetchain

下記のイラストで書かれているように、日常のあらゆる消費をブロックチェーンとARでつなぐものです。

Scanetchainのプラットフォーム

引用元:NEM based Commercialized AR Blockchain < White paper v1.0>, P.10

一例として、ARで名刺を読み取って広告を表示するデモ動画が公開されています。

youtu.be

この動画のアプリを実現すること自体は特に新しくありませんが、WhitePaper(マーケティング向けに自社の特徴を整理した文書)の下記の記載によると、広告を見ることでtoken(=仮想通貨)が発行され、それをショッピングに使える構想があるようです。

By default, users in a Scanetchain get their tokens by watching the ads.
The user will purchase goods and contents with the collected tokens.
Sellers will place ads with tokens received from sales.
The Compensation system leads the token circulation structure where users who watch advertisements to receive more tokens.

引用元:NEM based Commercialized AR Blockchain < White paper v1.0>, P.21

他にも応用例を考えているようで気になりますね。

なお、私が調べた限りでは、MRに関するものは見つけられませんでした。

3. ブロックチェーンとUnity

3.1 UnityでDappsを使ったゲームを作る仕組み「Loom Unity SDK」

Unity SDK · Loom SDK

前回の記事で書いたカンファレンス登壇者キヨスイ氏は、現時点では、有名なスマホゲームの方がブロックチェーンを使ったゲームよりも面白さが上だと言われていました。Unityは表現力が高いので、面白いゲームが出てくるきっかけになるかもしれません。

なお、Dappsについては前回の記事「4.1 Dapps」で解説しています。

3.2 ゲーム中のアイテム売買を管理する仕組みDMarketをUnityで使えるアセット「DMarket Integration SDK」

アセットストアにもありました。DMarketはブロックチェーンを使ってアイテム管理ができる仕組みです。これをUnityで使えるようにしたものです。

下記の公式動画には、Unity上で使い方、実装の仕方から、ブラウザを使ったアイテム管理方法までが一通り紹介されています。

youtu.be

ブロックチェーンを使ったゲームはまだ数が少ないのであまり情報がありませんが、一通り揃っているのは便利ですね。

3.3 ゲームの問題をブロックチェーン技術で解決するアイディアソン

【台風直撃予報のため開催延期します】ゲームの問題をブロックチェーン技術で解決するアイデアソン | Peatix

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン主催です。ただし、台風により開催延期されたようです。(その後開催されたかは不明です)

4. おわりに

ざっと調べただけですが、思ったよりも色々ありました。
これまで、XRの活用というと、ゲーム、エンターテイメント、アトラクションから、産業分野での応用(製造、物流、訓練など)など、単体のアプリケーションの話が多かったと思います。また、毎日使う実用例はまだない状態です。
今回調べた範囲では、ブロックチェーンが関わることで、VR側では通貨を伴った仮想世界の共有が、AR側では日常生活に溶け込む例がありました。XRがもっと普及するには、より多くの人が使う状態を作ることが必要ですが、ブロックチェーンはそのために必要な技術かも、と感じました。

一方、それらが実現するには、今のブロックチェーンではまだ課題があります(トランザクション時間とか、マイニングコストとか)。なので、今回紹介したプラットフォーム系のビジネスが成立するには、あと数年はかかりそうです。ブロックチェーンはあくまでも手段の1つとして、作りたい世界に合うときに活用するスタンスが重要と思います。