CrossRoad

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WebXRをサポートするFirefox Realityの後継ブラウザ「Wolvic」について

これまでWolvicについてあまり知らなかったので、どんな団体がどういう経緯で開発をしているのかについて調べてみました。

また、Quest2のApp Labで配信されていたので実際に試してみました。

1. Wolvicとは?

VRヘッドセットに対応したVR空間で使用するブラウザです。元々はFirefox Realityという名前で出ていたブラウザと中身はほぼ同一です。Firefox Realityの運営元であるMozillaから、Igaliaに引き継がれることになりました。

Today, we’re delighted to announce that the Firefox Reality browser technology will continue under Igalia

引用元:Update on Firefox Reality

このあたりの経緯については、以下の記事がわかりやすかったです。

www.itmedia.co.jp

2. なぜWolvicと名付けたか?

こちらに理由が書いてあります。

www.igalia.com

一部抜粋して英訳
・歴史的に、ブラウザには動物の名称がついていることが多い。Firefoxの狐、Braveのライオンとか。他にも小さなブラウザプロジェクトでも動物の名称がついていることがある
・なので、今回のそのような歴史に沿うことにした
・Wolve (狼) は、自然界において生態系の調整役とされている。我々のブラウザは、健全でバランスの取れたWebのエコシステムを維持するために重要な役割を担いたいと考えている

補足:以下の記事はソフトウェアに関する内容ではなく、生物学的な内容です、狼がいない場合、いる場合で生態系が変化したことが書いてあります。
イラストだけ見ると左側の方がよいように見えますが、文章を読んでみると、Wolves (狼) がいることによって動物が増えすぎなくなって草木の生態系が戻った、水がきれいになったなどが書いてあります。

Wolves & Our Ecosystem - Living with Wolves

・また、Wolveと人は昔から助け合って生きてきた。このようになってほしいという比喩的な意味も含んでいる

補足:以下は本文に記載されているのではなく私が見つけた情報です。狼と人が助け合って生きてきた、とは、この辺りかもしれません。

 2万~4万年前のドイツあるいはシベリアで、どの種かは特定されていないが、オオカミが人の居住地周辺をうろつき始め、生ごみや食べ残しを得ていたと考えられている。
オオカミは本来、臆病で用心深い。だが、群れのなかでそうした特質が少ない個体が人に接し、時間をかけて愛想が良く忠実なイヌへと進化して、私たちの心や家を温かくする存在になったと考えられている。

引用元: イヌへの進化のきっかけ 人と遊ぶオオカミだった? | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

補足:英語では、icという文字をつけるとそれに関する、という意味を持つようです。今回はWolvesにicをつけてWolvic、つまり「狼に関する、狼のように」という意味と考えられます。

参考:わたしは英語で生きていく! : 形容詞の語尾 (-able, -ous, -ic, -ish, -ive)

3. 開発を引き継いだIgaliaとはどんな団体?

IgaliaのYouTubeチャンネルをいくつか視聴してIgaliaの発音を確認しました。日本語的に発音するとイガリアと読みます。
スペインを拠点としたOSSに関するコンサルタント、開発、upstream活動を行なっている有限会社です。

www.igalia.com

このページにある「Download our brochure」というリンクから会社概要を見ることができます。
(brochureはパンフレットです)

これをみると、2001年設立、クライアント側のWeb技術だけでなくLinuxカーネル周りなども得意としていることがわかります。

IgaliaがなぜFirefox Realityを引き継ぐことにしたかについてはこちらに書いてあります。

www.igalia.com

一部抜粋して意訳
・XRにはWebが欠かせないと思っている
・自分たちはWebブラウザのエンジン、Webkit、マルチメディア、グラフィックス、組込システムなどの知見、他のブラウザへの対応実績などがあり、Firefox Realityを引き継ぐのに適している
・最初はAOSP-based (Android Open Source Project)に沿ったデバイス、スタンドアロンやHarmonyOS搭載のPC接続型のVRヘッドセットを対象としている。具体的には、Oculus (Meta), Huawei VRヘッドセット, HTC Vive Focus, Pico Interactive, Lynx
・2年間は続けられるように予算を確保しているが、一緒に支援してくれる企業は随時募集中。興味があれば連絡してほしい
・Wolvic browserのソースコードはGitHubで公開しているのでフィードバックをお願いしたい

4. Wolvicを使うには?

2/19に確認した時点では、Oculus App StoreとHuawei AppGalleryの2つで入手できるようです。私はHuaweiのVR機器を持っていないので、Quest2で試してみました。

参考
Welcome to Wolvic

Wolvicを使うには、スマートフォンのOculusアプリから「Wolvic」で検索するか、Quest2を装着してVR内のアプリストアで「Wolvic」と表示する必要があります。

現時点ではApp Labという形式で配信されています。App Lab形式の場合、正しくアプリ名を入力しないと表示されないという制限があります。

App Labやアプリの検索方法などは、以下の記事がわかりやすいのでご参考ください。

styly.cc

5. Wolvicを試してみた

このように、背景 (360度画像?) が雪山で右側に狼が見えます。

Wolvic browser background in Quest2

2/19時点でバージョンは0.9.4です。すでに日本語に対応してくれており、設定画面などすべて日本語で表示されています。

Wolvic browser version 0.9.4

ざっと見る限り、Firefox Realityと表示内容は同じに見えます。画面を最大3つまで増やせることとか、

Three screens of Wolvic browser

各種設定があるところなどです。(全ての設定画面を表示していません)

1st example of Wolvic browser setting

2nd example of Wolvic browser setting

3rd example of Wolvic browser setting

また、WebXRのVRをサポートしています。

Wolvic supports WebXR immsersive-vr

6. おわりに

WolvicのソースコードはGitHubで公開されています。

github.com

そのため、自分なりの改造をしたブラウザを作ってみたい、contributionをしてみたい、などもできますね。

Android Studioを使って開発するようですので、タイミングあればビルドやデバッグ方法について調べてみたいなと思いました。