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【2020/8/3更新】Microsoft MVP受賞のための活動や手続きを詳しくまとめました

2016/12/16 作成
2017/8/2 応募時期、カテゴリなどの変更を反映
2018/10/28 応募方法の変更を反映
2019/7/5 古いカテゴリ名称を更新、全人数の情報を追記
2019/10/29 MVP事務局の方のスライドURLを掲載
2020/8/3 MVP人数を更新

これはUnity Advent Calendar 2の16日目の記事です。昨日は、@riberunn さんの「メッセージやパラメータをYAMLファイルで定義・参照する」でした。

本日は、Microsoft MVPをUnityで受賞する方法を解説したいと思います。





1. Microsoft MVPとは?

1-1. 概要

Microsoft MVP Award
この記事に記載のように、ある技術分野のコミュニティの発展に貢献するような活動をしている人をMicrosoftが表彰する制度です。有効期限は1年なので、受賞を継続するには毎年のコミュニティ活動が欠かせなくなってきます。



2019/10/29 追記
マイクロソフトのCommunity Managerの方がMVPに関するスライドを公開されたので、リンクを追記しました。MVPの歴史や現在のMVP受賞者の声が書かれているので、MVPにご興味ある方は是非ご覧ください。

www.slideshare.net



1-2. 受賞対象分野



2017/8/2 追記
2017年2月以降、若干の名称変更や統合がありました。こちらに対象分野が表で掲載されています。

All category of Microsoft MVP 1/2 as of 5th Jul 2019

All category of Microsoft MVP 2/2 as of 5th Jul 2019

引用元:MVP Award Update

Unityで受賞を狙う場合は「Visual Studio and Development Technologies」、Unityに関連したWindows Holographic関連で受賞を狙う場合、「Windows Development」で応募するのがよいです。




2019/7/5 変更
・2018/7/11に「Visual Studio and Development Technologies」→「Developer Technologies」へ名称変更されていたので反映  
 ( @RyotaMurohoshiさん、ご指摘ありがとうございました)

・Windows Holographicという言葉は最近あまり使われないので、表現を変更

ということで、2017/8/2に書いた文章をこのように変更しました。

Unityで受賞を狙う場合は「Developer Technologies」、Unityと大きく関連するHoloLens、Windows Mixed Reality Headset関連で受賞を狙う場合、「Windows Development」で応募するのがよいです。




ところで、Unityもそうですが、Microsoft製でない技術が多いですよね。これは2015年の10月からアワード規約が改訂されて増えたため、のようです。

単一の技術専門分野にて表彰していた従来の MVP アワードの構造を改め、技術の垣根を超えた広範囲にわたる MVP のコミュニティ活動を表彰する運びとなりました。

これにより、開発者と IT 技術者に関連した MVP の受賞分野は、従来の 36 の技術専門分野から、オープンソース技術を含めた 90 種類の活動領域から構成される 10 の受賞カテゴリーへ変更となります。
引用元:MVP Award Update
とはいえ、Microsoft製以外の技術については、Microsoft製の技術や製品にも結びつく活動であることが必要と思います。そう思った理由として、下記の関連記事を見つけました。

MVPになるのはどうしたらよいのだろうか? マイクロソフトが力を入れていきたい分野で活躍する人はもちろんのこと、MVPは各製品の事業部からの出資から成り立っているため、その時点で事業部の求める人材像がクライテリアになる可能性は高い。
引用元:ASCII.jp:Microsoft MVPが個人とコミュニティのパワーをフルに引き出す (1/2)

上記の通り、MVP候補者の最終審査は、事業部が行うようです。そのため、UnityであればUWPやHoloLensとか、Windows Holographicで提携しているHTC VIVE関連とか、何らかの形でMicrosoftに関わってくる分野の活動の方が受賞確率は高まると思われます。

1-3. 受賞者の人数

全世界では約4000名、日本国内では約250名が受賞しています。カテゴリ内の技術別の人数内訳は非公開ですが、数名から数十名と思われます。


(2018/7/2追記)
こちらの記事によると、2018年7月の更新タイミングで、受賞者の人数が20%程度減少したとのことです。
MVP’s around the World | EighTwOne (821)

(20197/5追記)
2019年7月の更新タイミングで、受賞者の人数が14%程度減少したとのことです。
MVP’s around the World (2019) | EighTwOne (821)

(2020/8/3追記)
2020年7月の更新タイミングで、受賞者の人数が8%程度増加したとのことです。
MVPs around the World (2020) | EighTwOne (821)

このブログの筆者は、下記のMVP Searchページの登録者を集計し、カテゴリ別、国別に分類した結果を表にされています。

Find an MVP

これによると、Unityを含むDeveloper Technologies、HoloLensを含むWindows Development、MVP全体の人数はこのように推移しています。

カテゴリ 2018/7 2019/7 2020/7 前年との変化
Developer Technologies 780 644 697 8%
Windows Development 186 119 110 -8%
全カテゴリ 3066 2634 2849 8%

年ごとの変動がありますが、少し人数が増えたようです。


1-4. 有効期限

1年間です。1年おきに再審査があります。


(2017/8/2 追記)
2017年2月以降の改正により、審査の月が7月に統一されました。そのため、初回の有効期間が人によって変わりました。



2. 受賞の特典

2-1. アワードキット

このような「たて」が送られてきます。ガラス製で結構重いです。
Microsoft MVP受賞者に送られるたて
他にも、ピンバッジ、証明書のようなカードと賞状も同梱されています。

2-2. サブスクリプション

Office 365 E3相当のサブスクリプションを使うことができます。Office365とは、Microsoft Office製品を端末問わず使えるサービスです。Officeと言えば最も有名なのは、Word、Excel、PowerPointですが、今のOffice365はこのように多数のアプリケーションがあります。
Office365のポータル画面
また、5人分のライセンスが付与されており、ポータルサイトからアカウントを発行することで、自分以外の人でも使うことができます。
(ユーザライセンスの数は受賞カテゴリによって変わります)

2-3. カンファレンス参加


MVP受賞者限定のカンファレンスに参加することができます。大きく二種類あります。

(1) MVP Global Summit

世界中のMVP受賞者が集まるカンファレンスです。MVP受賞者だけでなくMicrosoft本社の方も参加するので、とにかく色々な方と交流できます。

講演やセミナーのほか、そこでしか得られない最新の技術情報も得られます。ただし、参加にはNDA締結が必須のため、Global Summitでどんなことがあったのか、何を知ったのか、などは言えないことになっています。
(ネット検索で「MVP Global Summit」でブログ検索しても中身が出てこないのは、そのためです)

2016年のMVP Global Summitは11月にシアトルで開催されました。10月に受賞した私も参加資格はあったのですが、諸事情でどうしても日程が合わず、残念ながら欠席しました。来年もMVPを受賞できたら参加したいと思います。

(2) MVP Open Day

こちらもNDAなので詳細は言えないのですが、MVP受賞者同士の交流を深めるためのイベントです。国別に開催されるようです。

2-4. 製品開発部門のメーリングリスト、オンラインミーティングへの参加

こちらもNDA前提となりますが、受賞カテゴリに関係した製品開発を行っている部署のメーリングリストや、オンラインミーティングに参加することができます。オンラインミーティングについては、週1回程度の頻度で開催案内が来ます。

製品開発部門に対して直接フィードバックをかけることができるため、中々ない機会だと思います。

2-5. コミュニティメンバーとのつながり

MVP受賞者の方は、それぞれの技術分野で突出しています。受賞者の集まりが不定期にあるので、機会を利用してそのような方たちと交流できるのはとても励みになります。また、MVP経由のつながりで、書籍執筆とか転職の機会も増えるそうです。これらはMVPを受賞しないとできない体験ですので、これらだけでもMVPを目指す価値があると思います。



3. 応募方法

では、どうやったらMVPを受賞できるのか、についてです。大前提としてMVPを受賞するには、まずは応募することです。Microsoftが突然声をかけてくれることは滅多にありません。



(2018/10/28 追記)
2018/10/25より、応募方法が変更になりました。
これまで:自己推薦、他者推薦
これから:現役MVP or MS社員からの推薦応募のみ

そのため、応募する場合は、現役MVP or MS社員が推薦手続きをした後に応募用のURLが届く、となりました。今わかっている情報では、応募URLが届いた後にやることは従来と変わっていないようです。 また、推薦から開始していることで審査が有利になることもないそうです。

以下は応募に関する公式HPです。

MVPの応募ページ

この中にある「MVP global support channel」というリンクがメールアドレスです。現時点で現役MVP or MS社員との接点がなくても、応募資格に当てはまる場合は彼らとつなぎます、とあるので、当てはまりそうな方はコンタクトをお勧めします。


応募用のURLは下記です。Microsoftのアカウントでサインインする必要があります。

https://mvp.microsoft.com/ja-jp/Nomination/NominateAnMvp

応募フォームでは、氏名や連絡先の他に、自分の活動内容と自己PRを入力していきます。基本的にはこれだけです。活動内容の種類は、

  • 勉強会での発表
  • ブログでの技術情報執筆
  • 何かの技術で作った作品を展示
  • 書籍執筆
  • メディアへの寄稿
  • Githubなどでソースコードを公開
  • コミュニティの運営

などなど、コミュニティやユーザーと幅広く自分の技術に関する知見を共有している活動はすべて対象となります。
(活動が多い人は入力が大変かもしれません)

あとは提出すれば審査が進みます。3回の審査を経て、通ればMVPを受賞できます。

ちなみに、審査は1年で4回実施され、1月、4月、7月、10月のいずれかを開始月として受賞が決定します。本日12/16だと1月受賞者の選考中になるので、受賞に興味ある方は、4月受賞を狙って応募することになります。1月以降に、上記のサイトをチェックすることをお勧めします。



2017/8/2追記
2017年2月より、申請期間が大きく変わりました。

従来の審査:三ヶ月ごと
今後の審査:毎月
更新タイミング:7月
そのため、時期によっては、初年度のMVP表彰の有効期間が長くなることになります。




4. 応募時に気をつけるとよいこと

4-1. 簡潔、かつ客観性のある文章にする

最も簡単に言うと、自分の活動がいかにコミュニティに影響力あるものなのか、すごい活動なのか、を文章で伝えることが重要だと思います。例えば、「Unity勉強会でshaderの書き方の発表をした」とします。

この活動を応募フォームに書く場合、単に「発表をした」だけでなく、

  • どれくらい続いている勉強会か? (例:2012年から年間4回開催している、開催が初めてで自分は第一回目として発表した)
  • 参加者人数は?(例:参加者100名)
  • どんな影響があったか (例:自分の発表したshaderの使い方で、最近のスマホゲームで使われる光のエフェクトを簡単に表現できるようになったので、スマホゲーム業界の人、趣味で新しくゲームを作りたい人に貢献できた)

のようなことを混ぜて書くと、Unityを知らない人でも、客観性のある数値と効果を読むことで、その勉強会で発表することのすごさが伝わります。また、その勉強会での来場者の反応などを示すのもよいと思います。

なぜこのような提案をするか、ですが、審査をする方はあらゆる技術や勉強会に精通しているわけではないためです。また、多数の応募フォームを見ているため、「私の活動はすごい」を客観性のある言葉で伝えて審査する方の印象に残す必要があります。

4-2. 自己PRを工夫する

審査事務局より別途、自己PRの提出が求められます。ここは自分自身の活動を要約し、今後コミュニティにおいてどんなことをしたいか、と言う抱負を書くところです。これは私の個人的予想ですが、審査をする場合、まずここを見て応募者がどんな人でどんな活動をしているのか、を見極めるのだと思います。

最初の見極めで評価が良くないと困るので、ここは簡潔かつわかりやすく書く必要があります。

4-3. MVP受賞者に事前チェックを依頼する

審査に通った人であれば、書き方のコツも分かっているはずなので、個人的には事前チェックを依頼することをお勧めします。私の場合も、@mitsuba_tan さんに見ていただきました。

5. 日本のMVP受賞者の方のブログご紹介

参考までに、私が知っているMVP受賞者の方を一部ご紹介します。(順不同です)

mitsuba

http://c-mitsuba.com

C#、Javascript、Rubyなどの言語の他、XAML、Blendなどの描画系の言語にも詳しい方です。書籍も出されておられます。

xin9le.net

xin9le.net

C#、.NET Frameworkを中心に活動されている方です。北陸地域でコミュニティ運営もされています。

Natural Software

http://www.naturalsoftware.jp

センサーデバイス系について書籍やブログなどで情報発信をされている方です。特に、HoloLens関係の情報発信では日本で最も多いかと思います。

つくるの大好き

つくるの大好き。

Kinectなどのセンサーデバイスを使って新しいものを生み出すコミュニティ「TMCN」に所属されている方です。センサー系だけでなく、VRやAR関係でも多数の作品を出展されています。

かずきのBlog@hatena

かずきのBlog@hatena

Windowsアプリケーション関係で多数ブログを書かれています。Windows 10以降のアプリケーションプラットフォーム「UWP」について電子書籍を発行されています。UWPに関する情報は少ないのでとても勉強になります。

他にもたくさんの方がいらっしゃいますので、ぜひ探してみてください。

6. 終わりに

Microsoft MVPは、Unity系のコミュニティではまだあまり知られていないと思います。私が知らない受賞メリットもまだまだあるはずですので、気になった方はぜひご検討ください。今回の記事が、MVPを考えている方の助けになれば幸いです。

次回は、@isemito_niko さんの「VRデバッグに役立つかもしれないアセットを作りましたのでその紹介」です。よろしくお願いします!